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2007年5月

●第1069話 『一言が人生を変え、人生が一言を変える』

●第1068話 死について考える

●第1067話 洪川老師の「亀鑑」を思い出して

●第1066話 『入室参禅』について

●第1065話 『隻手の音声』、聞けるものなら聞いてみろ。

●墨蹟は読めない方が良い?

●第1063話 『身体、心、頭』について

●第1062話 『大子の禅会にて』


●活人の誓いについて

●『好事不如無(こうじ(も)なきにしかず:碧巌録』

●5月1日の『自由』に関する応答を読んで、「もう少し易しく説明して」という追加の質問に応えましょう。

●『善悪』について 

●『本来』の意味・意義について

●『和光同塵(わこうどうじん)』こそ“美しい日本”の真の姿。

●良寛さんの漢詩に学ぶ

●般若心経における鈴木大拙の解説と和尚の解説が違う、という指摘に応える。


●釈尊曰く『少欲知足』を考えろ!

●『泥佛不渡水 神光照天地(でいすいみずをわたらず しんこう てんちをてらす)』

●回向文について

●仏教では“方便”を多用すると言われていますが、それは“嘘”だとうことですか?という質問に応えて。

●慧智和尚さんの強さに秘密を教えてください、と30歳の女性から質問されて。

●『無常の偈』に学ぶ

●『大鑑慧能の禅』とは?という質問に応えて

●良寛和尚の心、一休和尚の心


●活人禅とは、殺す事と見つけたり

●『自由』という言葉は簡単なのに、何故、難しく考えなければならないのか?という学生からの質問に応える

●『道無心合人 人無心合道』祖堂集、第巻十鏡清・第巻二十

 

【前の記事】

 

2007年05月02日

●活人禅とは、殺す事と見つけたり

 臨濟義玄(りんざいぎげん、諡:慧照禅師)大和尚は、臨済宗の宗祖で『臨済録』という公案の宝庫である語録で知られている禅師で、『逢佛殺佛 逢祖殺祖 逢羅漢殺羅漢 逢父母殺父母 逢親眷殺親眷 始得解脱』、仏に逢うては仏を殺し、祖に逢うては祖を殺し、羅漢に逢うては羅漢を殺し、父母に逢うては父母を殺し、親眷に逢うては親眷を殺し、始めて解脱を得ん」という心を残している。この文脈が教喩する真意は、先入観、固定観念を捨て切った後の心で全てを見ろ、ということだと拙僧は理解している。
 大衆の多くは、それぞれの言語活動(Langage:ランガージュ:仏語)で勝手に創り上げた幻想を、恰も“相手そのもの”と思い込んでいる。本来の心である『自他不二』、父母未生以前の心、二つ分れとなる以前の本来の心を思い出せば、仏とはこれこれ、親はこれこれ、禅はこれこれ・・・。それから出発して、親は~でなければならない。宗教は~でなければならない、禅は~でなければならない、茶は~でなければならない・・・などの“思い込み”がつくられ、それが熟成して先入観となり、本来は誰にでも平等に備わっている“己の自由”を放棄してしまっていることへの警鐘である。
勿論、全てに手前勝手な解釈をしろというものではない。『己事究明の後に唯一であれ』であって、1-2年僧堂に坐っただけで禅を語るなど言語道断、蒙昧の限りである。良い例に利休百首の百番目にある茶道の極意中の極意『守破離(規矩作法 守り尽くして 破るとも 離るるとても 本を忘るな)』がある。実は、これすらも、鎌倉時代の利休が書き残したとか、室町時代の世阿弥の言葉だとか“特許争い”のような下衆な論争を聞いたことがあり、近代の凡夫の本家論争のように微笑ましい部分はある。
 さて、昨今、自分が作った教訓ではなく、他人のつくった教訓を並べて企業理念などという経営者も現れているが、これは二重の誤りをおかしている。ネット禅士には、コンサルタント、経営者が多く居るようだが、今日の講話は咀嚼を繰り返して己のものにして欲しい。
 『捨て切る』≒『殺す』。幻想を殺す。これが大事なんです。活人禅は殺人禅。活殺自由。御分かりかな。
一日一生 慧智(070502)『願わくは、この功徳を以って普く一切に及ぼし、我らと衆生と皆ともに、仏道を成ぜんことを』

 

●『自由』という言葉は簡単なのに、何故、難しく考えなければならないのか?という学生からの質問に応える

■「『自由』という言葉は簡単なのに、何故、難しく考えなければならないのか」という疑問がHP来訪者(学生)から寄せられた。そこで、過去、何回か書いてはいるが、再び、活人禅が考えている日本語本来の意味としての“自由”を“自由”として、質問者が考えているとと思われる『自由』を『自由』と書いて説明してみます。なお、“自由”でも『自由』でもない“手前勝手”は、自分だけに都合が良い未熟な軽薄なる“我”の表出として、ここでは触れません。 さて、質問者の考える『自由』は、二元論(二分論)世界、還元論世界の価値観が生んだ自我と対峙する“他(彼)”、例えば天変地異など天然の驚異、間断なく刻む時、意思に反して従っている権力(法律)、否が応でも従うことになる家系的な伝統、遡ることが出来ない過去の積み上げとしての文化(神を含む)・・・などからの拘束や圧迫から解き放たれたFreedom:フリーダム、Liverty:リバティという英単語の持つ意味を、日本語の“自由”と思い込んでいるのではないだ
ろうか。だとしたら、日本人がそれを『自由』と呼ぶのは全くの見当違い。また、仮に百歩譲って、質問者が思っているのが『フリーダムやリバティ≒自由』だとしても、そこには『権利と義務』から『責任と権限』への人間的な成長を前提とし、『自由』は予め与えられているものではなく“勝ち取るもの”であり、学問、修養、労働を通じて得られるもので、学生には自由は無い、と理解出来ているはずである。言い換えると『フリーダムやリバティ』は、西洋社会では然るべき前提がある概念であり、自我を取り巻く制限された外界から開放されるのが『自由』であり、それは相対的概念であり、絶対的概念ではない。
■他方、東洋社会(とは言っても仏教、特に臨済録などの禅書を背景にもつ日本文化)における“自由”とは、“自に由る(おのずからに、よる)”という父母未生以前から内包している“自然の理由と共にある自然の一部である己”、全てを“あるがままに”受け容れている状態を指し示す仏教用語を語源にしたもので、近代におても円覚寺(臨済宗)所縁の故人である禅者(禅学者)の鈴木大拙と西田幾太郎の二人でも解釈は微妙にずれてはいるが、概ね相対的概念である自我、煩悩から“取り戻す”対象が“自由”で、簡単に言えば、勝ち取るものではなく“最初からある”囚われない、拘らない、偏らない心そのものが“自由”なのである。言い換えれば、自由主義は、主義という拘り、囚われ、偏りの凝縮である以上“自由”ではないのである。
■そもそも言葉や言語は、言語学的には“PAROLE:パロール(個人的“言葉”・方言)”の集まりである“LANGUE:ラング(言語)”というように分けるという西洋思想が下敷きにあるので、『自由』は言語学的に理解できるが、“自由”は禅を全身で学ばなければ解らない概念です。
■結論的に言えば、自由を二元論的な表現で言えば人間の自由は唯物論的自由と唯心論的自由があり、一元論的な表現であれば自由は自ずからの由”、“素より”のあり方ということになる。
■大胆な表現を使えば、西洋人の『自由』は懲役からの解放である目に見える世界の規範であり、本来の“自由”は、先入観を捨てた心に映る宇宙の規範と言っても過言ではないだろう。
■質問に対する答え
 ①全ては縁起により生起する“空”を理解している。
 ②相対的な認識で振り回される我は実体ではなく幻想であり無我≒己を理解している。
 ③事の本質は己の心の中にのみあることを理解している。 ④あらゆる先入観を捨て去っている。
心が以上の状態を実現できている時の心が自由であり自在に動ける融通無碍が実現できている状態、生死をも超越している心の状態を言います。
■蛇足①
西洋人は西洋哲学における自由の定説では『人間には自由は無い』という結論を乗り越えるため、本物の自由を得るには“禅”しかないと思っている人が大多数なのです。残念ながら、それでも西洋人は西洋人なのかもしれませんので、禅の修業は厳しければ厳しいほど本物の自由を勝ち取れると思っているようです。
■蛇足②
第二次世界大戦中のヒットラーが求めた西洋的自由と、アウシュビッツの入り口にある看板にある「労働で自由を(アルバイテット マハト フライ)の西洋的自由は、底辺では同じなのです。本当の自由とは“不戦”と“協働”の同時実現です。つまり“不二”、萬法一に帰すということを全身で体得した人間の心の状態といえます。

一日一生 慧智(070501)
『願わくは、この功徳を以って普く一切に及ぼし、我らと衆生と皆ともに、仏道を成ぜんことを』

 

2007年05月01日

●『道無心合人 人無心合道』祖堂集、第巻十鏡清・第巻二十

表題は、祖堂集、第巻二十に、問「古人有言人無心合道、如何是人無心合道。師云、何不問道無心合人。如何是道無心合人。師云、白雲乍可来青嶂、明月那堪下碧天」という文脈で登場する。読みは「道は心の人に合することなく、
人は心の道に合するなし」となる。意味は『本当に大事なのは、大道は人の心に合さないし、人も大道に合さない。二項対立ではなく、何事も最初から一体だ」ということ。“無”は有無の無でないのと同じ。
 小学生でも読み書き出来る文字だが、院生でも理解できない句。坐りましょう。
一日一生 慧智(070430)
『願わくは、この功徳を以って普く一切に及ぼし、我らと衆生と皆ともに、仏道を成ぜんことを』

 

 

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